長野の建築 4日目。

今日の行程

開智学校~えんぱーく~諏訪大社(四社)~藤森照信建築群(神長官守矢資料館・高過庵・空飛ぶ泥舟・低過庵(当時ワークショップにて建設中))

最終日は帰りも含め、時間があまり無いので7時半にホテルを出て、松本市内にある開智学校を見に行く。予定の関係上開館時間前だったので中は見れない。小学校の時に先生からもらった写真に写っていた日本で最初の学校とは違って新しく修復されており、イメージしていた素朴な学校ではなかった。保存というのはすごく難しい。

松本城を横目に眺めながら塩尻へ向かう。次は塩尻市にあるえんぱーくへ。実を言うとここはあまり期待をしていなかったのだけれど、それを大きく裏切られることに。まずはすごく使われ方が良い。これは単にきれいに使うという意味でなくて、ここを使う市民が自分の気に入りの場所を見つけ思い思いに使っているという点が素晴らしいという意味。

ここでは構造でもあり、空間構成の重要な存在でもある壁柱が存在感をはなっている。この壁柱を最大限活かし、柱では生まれない空間が機能と構造そして市民の要求に対して見事に答えている。えんぺーくのコンセプトは “人工の森” だったと記憶しているけれど、まさにその通りで要求されている機能を壁柱が隠しながら、離しながら、うまくつなげている。そしてこの森は少し迷うけれどもヘンゼルとグレーテルが残してくれたような記号があるので、目的地にたどり着けるようにできている優しい森だ。

 

えんぱーく①

えんぱーく② 壁柱が隠し、つなぐ。

 

内部には長野県内の市内の方向が書かれていて、長野の街の中にある都市の中の森という意味もあるのかもしれない。加えてフリースペース以外の稼働率も高かったように感じる、これも設計段階でのワークショップにより市民の意見が反映された結果なのだろう。また下部の公共と上部の賃貸スペースがしっかり別れているのも市民が気兼ねなくスペースを使う上でとても重要な役割を果たしている。

 

壁柱が生み出す木漏れ日あふれる森は訪れてみないとわからない部分が多いと思う。写真では伝わらない部分が多く、空間の広がりと外部と内部の関係がゆったりとしているすごく良い空間と建築だった。また再訪したい。

さて塩尻をあとに次は諏訪へ。

岡谷を抜けて諏訪大社四社巡りへ。諏訪大社は本宮・前宮・春宮・秋宮の四社から成り立っていて今回はその全てを回ることに。車って本当にありがたい。車が社会構造さえも変えてしまったことをこういうところから納得したりする。

 

諏訪大社 秋宮

 

諏訪大社はそれぞれの宮ごとに特色はあり、荘厳であるが地域の中に溶け込んでいる。それぞれの宮の四隅に御柱が立っており、それが御柱祭で運ばれてくるというなにか人々の信仰が厚く地域にとって諏訪大社がどれだけ大切な存在かを感じられる。歴史というのはそれ単体では成り立たなくて、周りの環境と人とが関係していないと築いていけない。時間と関係。これが必要なんだと考える四社巡りに。

 

いたるところで水が綺麗。

 

旅の最後は建築史家 藤森照信氏の建築を見に行くことに。

まずは諏訪大社の近くにある神長官守矢資料館へ。そこの館長さんの説明でこの近くに高過庵・空飛ぶ泥舟・低過庵(当時ワークショップにて建設中)があると教えてもらう(資料館の窓から見れる)。同じ市内にあることは知っていたけれどこんな近くあるとは。

聞くと藤森さんはこの地域の生まれで高過庵・空飛ぶ泥舟・低過庵があるのは藤森さんの土地だそうだ。長年こんな建物はどんな人が頼むんだろうと不思議に思っていた謎が解ける。

神長官守矢資料館はそこまで広くないが、奥に行くと狭くなっていく内部と自然素材でできた外部仕上げから新しい洞窟に入っていくようなワクワク感がある。今まで味わったことのない感覚だったかもしれない。実体験はとても大事だ。

高過庵・空飛ぶ泥舟・低過庵(当時ワークショップにて建設中)をその後に見て回る。資料館から坂を上がって2~3分。低過庵を作るワークショップが開催中で、資料館の館長に藤森教授に会えるかもよと言われていたが、違う場所で作業中だったようでお会い出来なかったけれど、現場の関係者の方に許可を得て写真と見学をさせて頂くことに。写真を取っていろいろ見ていたら、関係者の方のご厚意で中に入らせていただくことに。建設中の内部を見れる貴重な機会を頂けたのは四社巡りのご利益だろうか。ありがたい。もう低過庵は完成したようで再訪したい。

 

神長官守矢資料館 入館料100円 周りの植栽も面白い。

 

高過庵 設計:藤森照信 このアングルが好きだ。

 

高過庵とワークショップにて建設中の低過庵。

 

諏訪大社では車椅子のおばあさんを楽しくお参りさせようとするご家族に写真を撮っただけですごくお礼を言ってもらえたり、建築家のご兄弟を持つ方とお話できたり、茨城県に友人がいる方と資料館で出会ってお話したりと良い人達との面白い出会いがたくさんあった長野建築巡り。また再訪したい場所が増える事はいい事だ。

帰りは渋滞にハマったが、建築を色々見て熱が上がった頭の中を整理するにはすごくいい時間だった。

これにて長野建築巡りは終わり。